1986 Arbeitsjournal

サボテン
Arbeitsjournal
2025年2月5日更新

1986


工藤冬里



1月20日 荻窪グッドマン
《Pass Over Musings》

2月20日 荻窪グッドマン
《Peter at His Third Times》
MSHB

2月23日 国立 公民館
MSHB、光束夜

3月29日 足立区公民館
Ché-SHIZU

4月23日 梅田 キャンディホール
Ché-SHIZU

4月26日 荻窪グッドマン
《遠いけれど生々しい》

8月10日 ?


ギターの練習

次の音までにはまだ間がある
その隙間にいい風が入ってくる
外は風だったろうか
それは死臭ではなかっただろうか
ベッドの上に坐り
次の音は枕のように
風をふくんで着地した
その定着の大地は
義が月のなくなる時まで宿っている未来から
風のぶんだけずれている

次の音に向かって飛ぶ
見切り発車のベルのように
不完全さがスパイクを履いてバーを跳び超える
ギターを弾かない人の未来のことまで
考えてやったことがあるだろうか
むしろ独りで暗殺していく音は
的を外れていく個的実践とやらの
ある名前を持つ悪霊の
風に吹かれた名声の
断念という美しい表札の
ベッドに坐るギターのかたちをした眠り

風のように過ぎ去るうたの時間は
ポケットの小銭を使い果たしたいマイナー・キイの衝動のよう
次の音のためには自分が飛び降りる
地平は閉じていき
墓石を座に据えた村のようなサークルの中で
王冠となるための階段を登りつめ
重力とspeedのために黒い血の噴き出る割れた爪に
バンドエイドを巻きつける
飛び降りるのに言い訳は要らない
やってしまった事に終わりはない

次の音までには もう間がない
(欲望のために前もって計画するようであってはなりません)
むしろすでにあるものを
8日目の座から出すように
税金は市役所に
音楽の贈り物は贈り主に返しなさい
もうすぐ世界全体
君のスタジオになるのだから
今は風を避け
ギターを質に入れ
ギターを未来に救い出すことを考えなさい


?月 自宅
〈子供が帰った〉
『Tori Kudo at Goodman 1984─1986』に収録

10月5日 荻窪地域区民センター音楽室
《公民館運動》
Ché-SHIZU

10月25日 下北沢ロフト
Ché-SHIZU

10月31日 西荻 ワッツ
MSHB

11月30日 荻窪グッドマン
MSHB


(終)


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